第47回(2017.10.01)  「新規事業のアイデアは議論するほど平凡になる」

 新しい商品・サービスや事業のアイデアは、ユニークさや差別性を意識して発想されることが多いと思われます。すなわち、他社や他者が考えないような尖った(とがった)アイデアを発案したいと思い、考えることが多いと思われます。

さて、このように尖ったアイデアですが、複数人で議論していくと次第に角(かど)が取れて平凡なアイデアになっていくように感じます。一見、議論すれば洗練されていくようにも思うのですが、現実はどちらかというと、丸くて平凡なアイデアになっていくことが多いと感じます。議論していくに連れ、どんどん尖っていくということはほとんどないようです。もちろん、話がどんどん脱線していくことは、よくあります。

ところで、何故、新規事業のアイデアは議論をするほど平凡になってしまうのでしょうか。

そこには、自分の思考の枠組みに当てはまるようにアイデアを変質化していくことで、自分の気持ちを落ち着かせたいという欲求の本質があるからではないでしょうか。

 新規事業のアイデアは、「成長分野に乗っているものが良い」、「変化に沿ったものが良い」、「自社との関連性が強いものが良い」など、常識的評価の枠組みがあり、その評価の枠組みに沿うように思考するため、次第に平凡になってしまうのではないでしょうか。すなわち、評価の考え方、枠組みが平凡であり、そのためアイデアが平凡になってしまうのではないかということです。

 新規事業のアイデアを考える場合、顧客の欲求の本質に沿うことは非常に大切なことです。しかし、評価者側の欲求の本質に沿わないアイデアの方が、尖ったアイデアをキープできるかもしれません。この場合は、評価者の欲求の本質に沿わないことを目指すことになってしまいます。

一方、平凡なアイデアを提案すると、評価者側から「平凡でつまらない」という答えが返ってきます。この辺の思考回路は、実に複雑です。どこか非凡な要素、尖った要素を探しているという欲求も間違いなくあると感じます。

なお、この尖った要素ですが、企業によって求める要素の種類が異なっていると感じます。では、どのような企業が、どのような尖った要素を求めるのでしょうか。このことについては、別の機会で考察してみたいと思います。