第46回(2017.09.06)  「タクシーに“家まで”と行き先を告げる高齢者」

 地方出張に行った時は、タクシーに乗る機会も多くなります。今回は、関西地方でタクシーに乗った時にタクシードライバーの方から聞いた話を書いてみます。

 タクシーが多く停まっていたので、乗った際に「今日は待っているタクシー多いですね」と言うと、「今日は木曜日だからです。病院が午前中で終わるので午後は乗る人が減るのです」という返事が返って来ました。実は、その駅周辺のタクシーを利用する人は高齢者が多く、そのほとんどが病院との往復に利用するということでした。

次にドライバーの方が言ったのが「でも、困ることもあるんだよね。“どこまで行きますか”って行くと“家まで”って、言われるんだ。新人のドライバーは、分からないので教えて欲しいというと、会社にクレームが入るんだ」ということでした。

「いつも利用しているのだから、顔で行き先を判断して欲しい」ということのようです。行きつけのバーに行って「マスター、いつもの」と言うのと同じ感覚のようです。

さて、これは、どのような欲求に基づいているのでしょうか。「特別扱いをして欲しい」ああるいは「特別扱いが心地いい」という欲求の本質があるのかもしれません。

ただし、それをドライバーが特定できないタクシーにまで求めることには、ちょっと驚きではありました。

なお、この行き先を家までと告げる高齢者の方々は、走るルートも指定することが多く、知らずに異なるルートで行った場合は会社にクレームの電話をするそうです。

 ここまで来ると、わがままなのかニーズなのか、よく分からなくなりますが、お客様の視点に立つと、満たされていない欲求が存在していることになります。

なお、顔認証等現代の技術を利用すれば、上記ニーズに応える仕組みを作ることは、それほど難しくはないと思われます。

 タクシーに乗った時に「運転手さん、いつもの」と告げる、さらには自動運転のタクシーに向かって「いつもの」という時代が、近い将来には訪れるのかもしれません。