第43回(2014.07.02)  「犬は“マミムメモ”が聞き取れないという話」

 先日、我が家に新しくオスの子犬が家族に加わりました。生まれて3か月程度ですので、とてもかわいい存在となっており、この子犬目当ての来訪者が非常に増えています。

さて、本日は、この子犬の名前をつける時の話をしてみます。

 子犬は来る前から、どんな名前にするかを家族で検討していました。家族みんなから様々な名前が候補として挙がってきました。

カタカナ名がいい、いや、漢字名がいいなど、特に条件も定めなかったため、極めて幅広い名前が挙がってきてしまいました。

ちなみに、私が提案した名前は“ももぞう”です。

“ももぞう”という名前は、私以外の家族はどうも気に入らないという感情も持っていたようです。しかし、単に「嫌だ」では説得力がなく、また、そもそも、どんな観点で選んだら良いかということが決まっていないため、選定に迷うという状態でした。

その時、たまたま私の奥さんが、美容院で「犬には聞き取れない音(おん)がある」という話を聞いてきました。

 犬は、マ行(マミムメモ)とパ行(パピプペポ)が聞き取れないと言うのです。また、バビブベボなどの濁音については、ほとんどすべて同じ濁音と捉えてしまうと言うのです。そのため、もし、禁止のコマンドとして、「ダメ」という言葉を使っているとすると、どんな濁音も「ダメ」と聞こえてしまうそうです。従って、名前が“バビー”だった場合は、名前を呼ばれる度に、叱られていると思ってしまう可能性があるということです。

 実は、この話を聞いた直ぐ後に犬を飼っていた友人から電話がありました。この家では、2匹の犬を飼っていたのですが、その内の1匹が名前を呼んでも反応が鈍かったと言っていたのです。その2匹の犬の名前は、“モモ”と“ナナ”であり、何と、反応が鈍かったには、マ行の“モモ”だったのです。

この事実を聞いたことにより、美容院の話の信ぴょう性が急速に高まり、そのことにより名前選定の観点が明確になり、そして、選定作業が一気に進んでいきました。

ちなみに“ももぞう”は、秒殺でした。

さて、話を新規事業開発に移してみます。

 新規事業テーマや研究開発テーマにおいては、評価というプロセスが必ずあります。しかし、この評価は意外に苦労します。何故なら、「どの程度の数が売れるのか」という市場性や「競合に対する優位性を担保できるのか」という競争優位性などは不確実性が高く、事前の評価が極めて難しいためです。

この場合、一般的には評価のための情報が足りないということで、情報収集を追加するという行動が採られます。しかし、残念ながら市場性を判断できる情報収集などは難しく、もしくは存在せず、従って、不確実性のレベルはあまり下がらないのです。

 このような場合には、基準が明確な新たな評価の観点を加えることを推奨しています。これは、犬の名前が新たな観点で選定が容易になったことと通じています。

なお、どのような観点を追加したら良いかについては、別の機会にお話しできればと思います。