第18回(2007.10.04) 「社員旅行復活のきざし?」

 社員旅行を止めてしまった企業は、多いのではないでしょうか。特に、大企業には、この傾向が高いように感じます。

 社員旅行や社員運動会などは、日本企業の家族意識を培うには、非常に効果的なイベントだったと思います。しかし、このようなイベントは、コストの問題もありますが、大きくは社員の意識の変化が要因となり、急速に減少してきたものと思われます。

 ところが、最近、社員旅行をやりたいという声が高くなっていると聞きます。どのような人から声があがっているかというと、20代の若い人達が多いようです。理由は、社員の人達とコミュニケーションを深めたいということです。

 仕事を進めやすくするためにも、また、会社生活を充実させるにも社員間のコミュニケーションを重要と考えるのは当然と思われます。すなわち、欲求の本質がそこにはあるということです。

では、それにも関わらず、社員旅行は、何故減少してしまったのでしょうか。

 ひとつの理由は、押し付け的なコミュニケーションは、逆に、反発を招いてしまうということです。「機会を与えたのだから、仲良くなれよ」と言われると、不思議と人は、「そんな機会を与えてもらわなくても、自分たちで機会などはつくれる」と思ってしまいます。

また、もうひとつの理由は、旅行中も社内の上下関係が存在し、その権力構造を利用する振る舞いがあるということです。

 たとえば、宴会を盛り上げるために一発芸を強要する。そして“ウケ”が悪いと「芸がない」と小ばかにする。あるいは、女子社員には、宴会の出席には浴衣を義務付けるなどです。このようなことが続けば、若手社員は当然、嫌気が差してくるでしょう。

以上のことを簡単にまとめてみます。

 コミュニケーションを密にしたいという目的に対して、社員旅行はひとつの有効な手段になると言えます。しかし、一方では、社員旅行は、権力を持つ人達にとってはその権力を示す場所でもあるのです。実は、これも欲求の本質です。

ということは、相容れない欲求の本質がぶつかり合うという矛盾を解決しない限り、社員旅行というイベントは、消えたり、復活したりを繰り返していくのではないでしょうか。