第27回(2009.04.10) 「言い訳の理論武装」

TVで政治家の方の発言を聞いていると、政策に対して何らかの成果が出た時には、ことさら大げさに宣伝しますが、年金問題や失言などの失策に対しては、誰が聞いても「嘘だろ!」と思う言い訳をしています。一応、「言い訳の理論武装」をして釈明をしているということです。

そこには、“失敗を認めてはいけない”という強い心理が働いているように感じます。

さて、話を新規事業に移してみます。

新規事業開発についても、「成功した事業には、“あれは、俺が手掛けた”という人がたくさんいるが、失敗した事業には、“あれは、俺が手掛けた”という人はいない」という話をよく耳にします。

実際には、失敗事業に携わった人はいる訳ですので、その方々に過去の話しを聞くことはあるのですが、その時には、「自分も携わっていたが、失敗の主たる原因は○○という点にあった」という“言い訳の理論武装”がきちんとできています。

現役を引退すると、失敗経験が勲章になるらしく、自慢気に話す人は多いのですが、現役の場合は中々失敗を認めにくいものです。これは当然の心理です。しかし、新規事業の場合は、この「言い訳ができる」という“のりしろ”を残しておくことは大変重要と感じます。

最近、スポーツ選手などは、「結果がすべてですから」という発言をよくします。企業においても、成果主義という評価制度が増えてきており、これも、「目標に対する成果という結果がすべて」という形での運用も可能な制度と言えます。もちろん、そこまで極端な運用をしている企業は少ないと思いますが、しかし、「チャレンジ精神を低下させている要因のひとつに成果主義がある」という意見はよく耳にします。

研究開発や新規事業開発という業務において、「結果がすべて」という運用をされてしまうと、担当者はやや苦しい精神状態になってしまうと思われます。しかし、結果はまったく問わないということでは、これまた、気持ちが緩んでしまうということになり、非常に難しいモチベーションマネジメントが必要となります。

そこで、ひとつの解になるのではないかと思うことが、「言い訳の理論武装」です。これをいい意味での使い方ができるような環境をつくっていくことは、挑戦的業務を促していくことにつながるのではないかと考えます。挑戦的テーマと人の心理はかなり深い関係があると思われます。

このようなことも、弊社研究会の重要な検討テーマにしたいと思います。