第20回(2007.12.12) 「長続きするテニスサークルの秘密とは? その2」

 前回は、テニスサークルを題材にして、“体育会系テニス”より“お茶テニス”の方が長続きする傾向にあるということと、その理由について考察しました。

今回は、これをビジネスの場に置き換えて考察してみたいと思います。

 千葉県にあるエステサロンが、エステシャンの募集広告を出していたのですが、その広告には、「当店は、施術をしながらお客様と会話をしていただくことが特徴のサロンです」というようなことが書かれていました。話を聞くと、身体のことだけでなく、家庭のことや仕事のことなどの話をして、それを楽しむ顧客が非常に多く、そのため、募集にあたっても、楽しく会話のできるエステシャンという条件をつけて採用したいということでした。

 あるいは、トールペイント(生活用品に水性絵の具で絵を書く新しいアート形式)の教室を開いている先生がいるのですが、その方の教室は非常に人が集まっています。その最大の理由は、その先生が風水にとても詳しいためです。

 教室に来る人は、トールペイントより、次第に先生に相談に来ることが目的化しており、また、その相談を聞いている人達は、聞きながら自分の行動を変えていくヒントを得ていくなど、大変刺激を受け楽しいようです。

 これらの例から分かるように、特に顧客との接点を持つサービス業においては、提供するサービスの主たる機能、たとえば、エステによる痩身効果やトールペイントの上達などは当然大切なのですが、しかし、継続して通う動機は、主たる機能ではなく、会話や生活を潤すちょっとした情報入手や情報交換など副次的目的にあるのです。

 サービス事業の企画を検討する場合、主たる機能による顧客価値や競争優位を考えてしまいがちですが、それだけではなく、副次的な目的にも焦点を当て、欲求の本質を検討してみることも重要なことかもしれません。

 最後に個人経営のエステサロンの例をもうひとつご紹介します。

 そのお店のオーナー兼エステシャンは、韓流ドラマの大ファンであり、ドラマについて語り出すと止まらないほど語ることができます。実は、韓流ドラマのファンには、ドラマについて語ることが好きな人達が非常に多く、集まると語り合っています。

 従って、このオーナー兼エステシャンは、施術しながら韓流ドラマについて顧客と語り合うのです。語り合った顧客は、施術を終えて帰る時には、「少しはきれいになったかしら。」と言うのではなく、「ああ、楽しかった。また、お願いします。」と言って帰るのです。

「また何をお願いしたい」のかは、言うまでもないことでしょう。