第21回(2008.02.28)「モノを売るためのサービスの付加価値」

数年前より、パワーストーンを売るショップが増えているように感じます。
石には、水晶、ブラッドストーン、セレナイトなど挙げればキリがないほど多くの種類があります。

このように、多くの種類があるのですが、各々の石には異なる力があるそうです。たとえば、水晶は「浄化、魔除け」、ブラッドストーンは「精神力を高め、アクシデントにも負けないバイタリティ」、セレナイトは「洞察力、直観力を高め、優柔不断さを取り除く」という感じです。そのため、自分に足りない力、あるいはより強化したい力があるとそれに応じた石を買って、小さな心の安らぎを得るという訳です。

ちなみに、単に、石は、鞄に入れて持ち歩く用のものもあれば、ブレスレットやネックレスなどのアクセサリー用のものもあります。
さて、某バワーストーンショップの話です。
そこには、占い師がおり、運気を占い、そして、その人の運気を挙げるような石を選んであげて、それを販売するということを行なっています。人は、基本的に「運気が上がる」という言葉に実に弱いのです。

その上、この占いが実によく当たると評判なのです。「貴方の長女は色白で家のお手伝いをよくしますね。でも、下のお嬢さんは、ボーイッシュな感じでちょっと反抗していますね。」あるいは、「貴方の奥さんは、とても愛情のない、家族同士の関わりが大変乏しい家庭で育ちましたね。」など、誕生日を聞くだけで、会ったこともなく身内の人のことを、何も話さない内にどんぴしゃりと当ててしまうそうです。

そして、もうひとつ驚くことは、パワーストーンは、数千円から数十万円まで品揃えがあるのですが、ちょうどその人の手が届くレベルの価格の商品を勧めて来るそうです。極端な例では、無料であげてしまうこともあるそうです。「今はお金がないようだから、この石を持って帰ってください。その内、お金がたまったら石を買いに来てくださいね」という具合です。

こうなると、もう多くの人がファンになってしまい、そこの石は、他店よりパワーが強いように感じてしまう訳です。そして、口コミとリピーターで大変賑わうという状態になっています。

私は、商品の価値を「基本価値と付加価値」に区分して説明しますが、上記店舗の例は、モノの持つ基本価値を高めるサービス価値を付加して、全体として魅力ある価値を提供するということで、他店にはない特徴を出しているものと解釈できます。

実は、基本価値に、それを高めるためのサービス的付加価値を組み合わせた価値モデルというのは、他にも例があります。

単にモノを売るだけではなく、基本価値を高めるサービスの付加価値を同時に提供することにより、魅力ある事業に仕立て上げていくという事業モデルは、今後増えてくるのではないかと予想していますし、我々も、そのようなモデルの開発を提案し、支援するケースも増えています。

皆様の会社も、そのような意識を持って事業を構想してみることを試みてはいかがでしょうか。

第20回(2007.12.12) 「長続きするテニスサークルの秘密とは? その2」

 前回は、テニスサークルを題材にして、“体育会系テニス”より“お茶テニス”の方が長続きする傾向にあるということと、その理由について考察しました。

今回は、これをビジネスの場に置き換えて考察してみたいと思います。

 千葉県にあるエステサロンが、エステシャンの募集広告を出していたのですが、その広告には、「当店は、施術をしながらお客様と会話をしていただくことが特徴のサロンです」というようなことが書かれていました。話を聞くと、身体のことだけでなく、家庭のことや仕事のことなどの話をして、それを楽しむ顧客が非常に多く、そのため、募集にあたっても、楽しく会話のできるエステシャンという条件をつけて採用したいということでした。

 あるいは、トールペイント(生活用品に水性絵の具で絵を書く新しいアート形式)の教室を開いている先生がいるのですが、その方の教室は非常に人が集まっています。その最大の理由は、その先生が風水にとても詳しいためです。

 教室に来る人は、トールペイントより、次第に先生に相談に来ることが目的化しており、また、その相談を聞いている人達は、聞きながら自分の行動を変えていくヒントを得ていくなど、大変刺激を受け楽しいようです。

 これらの例から分かるように、特に顧客との接点を持つサービス業においては、提供するサービスの主たる機能、たとえば、エステによる痩身効果やトールペイントの上達などは当然大切なのですが、しかし、継続して通う動機は、主たる機能ではなく、会話や生活を潤すちょっとした情報入手や情報交換など副次的目的にあるのです。

 サービス事業の企画を検討する場合、主たる機能による顧客価値や競争優位を考えてしまいがちですが、それだけではなく、副次的な目的にも焦点を当て、欲求の本質を検討してみることも重要なことかもしれません。

 最後に個人経営のエステサロンの例をもうひとつご紹介します。

 そのお店のオーナー兼エステシャンは、韓流ドラマの大ファンであり、ドラマについて語り出すと止まらないほど語ることができます。実は、韓流ドラマのファンには、ドラマについて語ることが好きな人達が非常に多く、集まると語り合っています。

 従って、このオーナー兼エステシャンは、施術しながら韓流ドラマについて顧客と語り合うのです。語り合った顧客は、施術を終えて帰る時には、「少しはきれいになったかしら。」と言うのではなく、「ああ、楽しかった。また、お願いします。」と言って帰るのです。

「また何をお願いしたい」のかは、言うまでもないことでしょう。

第19回(2007.10.24) 「長続きするテニスサークルの秘密とは? その1」

 私の住んでいる地域にも、親達が集まり運営している多くのスポーツサークルがあります。ママさんバレー、テニスサークル、バドミントンサークル、サッカーサークルなど、様々です。

実は、これらのサークルを継続的に見ていて、ひとつ気づいたことがあります。
 それは、「メンバーの入れ替わりが激しく、次第に活動が不活発になっていくサークル」と、「メンバーが固定化、あるいは少しずつ増えていきながら、継続しているサークル」に分かれるということです。

 前者は、どちらかというと、試合に勝つことを目指して、かなり気合いの入っているサークルに多いようです。

 私は、このようなサークルを“体育会系サークル”と呼んでいます。テニスサークルであれば、“体育会系テニスサークル”ということです。

 これに対して後者は、試合に勝つ云々より、「テニスを始める前に、まずはおしゃべりタイム」というノリで、コミュニケーションを優先しているサークルが多いように感じます。
 私は、これを“お茶サークル”と呼んでいます。テニスであれば、“お茶テニスサークル”ということです。

 どうも、体育会系テニスより、お茶テニスの方が、メンバーが安定化し継続率が高いようです。
 では、何故、このような現象が起きるのでしょうか。今回は、このことについてDeep Thinkingしてみたいと思います。


 どちらのサークルも、始まりは、テニスが主目的であり、おしゃべりやお茶、宴会は副次的な位置づけだったと思います。
ところが、お茶テニスは、いつの間にか、副次目的が主目的化してきたものと思われます。
実は、この副次的目的の方が、万民に共通する本質的欲求なのです。そのため、お茶テニスは、メンバーが安定化し、継続率が高くなると考えられます。

 ところが、不思議なことに、スポーツという目的を取り外して、お茶するだけの会合にすると、長続きしません。何故か、お茶とおしゃべりだけでは飽きてしまうのです。
 主目的と副次的目的との重みが変化し、バランスを取りながら運営されていくということが、継続性のポイントなのかもしれません。

 次回は、このことをビジネスの場面に当てはめて、考えてみたいと思います。

第18回(2007.10.04) 「社員旅行復活のきざし?」

 社員旅行を止めてしまった企業は、多いのではないでしょうか。特に、大企業には、この傾向が高いように感じます。

 社員旅行や社員運動会などは、日本企業の家族意識を培うには、非常に効果的なイベントだったと思います。しかし、このようなイベントは、コストの問題もありますが、大きくは社員の意識の変化が要因となり、急速に減少してきたものと思われます。

 ところが、最近、社員旅行をやりたいという声が高くなっていると聞きます。どのような人から声があがっているかというと、20代の若い人達が多いようです。理由は、社員の人達とコミュニケーションを深めたいということです。

 仕事を進めやすくするためにも、また、会社生活を充実させるにも社員間のコミュニケーションを重要と考えるのは当然と思われます。すなわち、欲求の本質がそこにはあるということです。

では、それにも関わらず、社員旅行は、何故減少してしまったのでしょうか。

 ひとつの理由は、押し付け的なコミュニケーションは、逆に、反発を招いてしまうということです。「機会を与えたのだから、仲良くなれよ」と言われると、不思議と人は、「そんな機会を与えてもらわなくても、自分たちで機会などはつくれる」と思ってしまいます。

また、もうひとつの理由は、旅行中も社内の上下関係が存在し、その権力構造を利用する振る舞いがあるということです。

 たとえば、宴会を盛り上げるために一発芸を強要する。そして“ウケ”が悪いと「芸がない」と小ばかにする。あるいは、女子社員には、宴会の出席には浴衣を義務付けるなどです。このようなことが続けば、若手社員は当然、嫌気が差してくるでしょう。

以上のことを簡単にまとめてみます。

 コミュニケーションを密にしたいという目的に対して、社員旅行はひとつの有効な手段になると言えます。しかし、一方では、社員旅行は、権力を持つ人達にとってはその権力を示す場所でもあるのです。実は、これも欲求の本質です。

ということは、相容れない欲求の本質がぶつかり合うという矛盾を解決しない限り、社員旅行というイベントは、消えたり、復活したりを繰り返していくのではないでしょうか。

第17回(2007.09.14)“裏○○”の魅力の真相

 裏事情、裏ワザ、裏ROM、裏DVDなど、“裏”がついた言葉はたくさんあります。名詞に“裏”という言葉をつけるだけですので、数が多いのも当然と言えるでしょう。

 ところで、この“裏”という言葉には、妙に興味をそそる力がありそうです。今回は、この“裏○○”についてDeep Thinkingしてみたいと思います。

 たとえば、「芸能界の裏事情」という言葉を聞いた時、皆さんはどのように感じるでしょうか。

 「芸能界も、表面的には華やかだけど、裏では、嫉妬があったり、ギャラで揉めていたり、わがままな振る舞いに困っていたりと、ドロドロした世界があるのだろうな。その辺りが分かるのかな。」

というようなことを考え、面白そうだと感じるのではないでしょうか。

 では、このことが面白いと感じる理由ですが、ひとつは、自分の仮説が検証されることに対する期待感があると思われます。仮説、あるいは予想を立て、予想通りになることにちょっとした喜びを感じる傾向が、人にはあるということです。そして、予想が当たると身近な人にプチ自慢をする訳です。こんな、ちょっとしたことに喜びを感じるのではないでしょうか。

 もうひとつの理由は、単純にプライバシーを垣間見たいという欲求です。何故か、プライバシーを垣間見て、それをネタに話をするということが、人は好きなようです。理性では、「人のプライバシーを知って何が楽しいの」と理解しつつも、「ねえねえ、知ってる?○○子ってさぁ。」というように話し掛けられると、本能的に耳に神経が集中してしまいます。写真週刊誌やワイドショーがなくならないのは、この欲求があるためではないかと思っています。

 また、パチンコの世界にある「裏ROM」というのも、パチンコの好きな人には非常に興味をそそられる言葉です。

 この場合は、情報に希少性があるということ、すなわち、その情報は、限られた人にのみ提供されているということ、及び「自分は得することができる、限られたグループに入っている」ということに対する優越感と得した感を感じるのではないでしょうか。

 “裏情報”と言われてお金を払ったものの、よく調べたら“裏情報”でも何でもなく、「裏切られた」という経験をした方も多いのではないでしょうか。

 しかし、そのような経験をしたにも関わらず、「いい裏情報がありますよ。」と言われると、やはり興味を持ってしまいます。

 これは、欲求の本質というより、人間の“性(さが)”なのかもしれません。

第16回(2007.08.03) 「新幹線に乗る人の変化」

 新幹線に毎週のように乗っているビジネスマンは、多いと思います。私も、ずいぶん前から毎週のように乗っている一人です。

 さて、今回は、新幹線に乗っている人の様子の変化について、Deep Thinkingしてみたいと思います。

 15年くらい前と現在における新幹線の様子の違いで感じることはいくつかあるのですが、変化したひとつに、缶ビールを飲むビジネスマンが減ったということがあります。

かつては、出張帰りの新幹線では、多くの人が缶ビールを買って飲んでいました。しかし、最近は、この人数が減り、代わってパソコンを開いている人、携帯電話を使っている人が大変増えているように感じます。実は、私もメルマガは、携帯電話を使って書くことが多くなっています。

では、何故、パソコンや携帯電話を使う人が増えたのでしょうか。

 一般的に考えられる理由は、時間に余裕がなくなっているということです。すなわち、必要に迫られたために、新幹線の移動中でも仕事をしなければならなくなったということです。これは、仕事しなければならないというニーズがあり、そのニーズを満たす手段としてパソコンや携帯電話というシーズを利用するようになったということを意味しています。

 本当に、このような単純な理由なのでしょうか。私は、この場合は、どちらかと言えば、パソコンや携帯電話のような「シーズがあったから行動が変わった」という要素が強いように感じています。すなわち、道具に合わせて時間の配分が変わってきた、というより、自分で変えたということです。

 多くの人は、残業をしてもいいという気持ちで仕事をすると、時間内の終わらずに残業となり、今日は残業をしないぞという気持ちで仕事すると、時間内に終わるという傾向があるようです。そして、これらの行動は、無意識に行なわれているようです。

どうも、先の道具によって時間配分が変わることも、無意識に行なわれているように思われます。

 忙しいために行動が変わってしまったと本人は思っているのですが、実は、道具によって、無意識に行動を変えたということなのではないでしょうか。

 道具によって、いつの間にか行動が変化していたというようなことは、意外に多いのではないでしょうか。無意識に行動を変えるような提案を企業から仕掛けられれば、新たな需要を創出できるかもしれません。

第15回(2007.07.30) 「お笑いタレントから政治家になって人気が出る不思議その2」

 前回は、お笑いタレントから政治家になって人気の出る要素のひとつに、意外性があるという話をしました。そして、意外性は、人を魅力的に感じる重要な因子になっているということも、合わせてお話しました。

 今回は、他の要素について、Deep Thinkingしてみたいと思います。

 お笑い系出身の政治家の特徴には、話が上手く、時に笑いを織り交ぜて話をするということが挙げられます。すなわち、単純に、話が面白いということです。

 政治家の話に限らないことかもしれませんが、政治家の話においては特に、笑いを織り交ぜて話をすると、“余裕”を感じるようです。最適の党首討論会を見ていると、笑いを織り交ぜていることが少なく、このことが、余裕がない印象につながっているのかもしれません。

 有名人からの転身組としては、俳優やスポーツ選手出身の政治家も多くいますが、お笑い系出身者と決定的に違う点は、話の面白さにあります。本来ならば、政策や実行力などが問われるところですが、瞬間的な面白さに、人は惹かれてしまう傾向にあるようです。

 さて、話をビジネスの世界に移してみます。

 ビジネスの世界においても、講演や研修などが多く行なわれており、たくさんの人が人前で話をしています。講演や研修の終了直後に、聴講者にアンケートを取り、その評価をしてもらうことが行なわれていますが、笑いの多かったものは、評価が高くなる傾向にあります。特に、「涙と笑いと感動」のある講演は、非常に評価が高くなります。

 本来ならば、自身の業務にどの程度役に立ったかということが評価の重要ポイントなのですが、むしろ、刹那的な感情に評価の力点が置かれることになります。

 本来の目的は十分に分かっていながら、刹那的な面白さや楽しさを求めてしまう。このような傾向は、間違いなく存在しているように思います。たとえば、エステサロンに通う場合も、「より美しくなる」という本来の目的を当然求めるのですが、友達になった人との「おしゃべりが楽しい」という要素が加わると、格段に満足度が高まります。

 人は、本来の目的に加え、刹那的な面白さや楽しさを求める傾向にあるようです。

ただし、このことは、人間の本能なのか、あるいは、現代の日本人の特徴なのかは、もう少し深堀が必要と感じています。

第14回(2007.07.17) 「お笑いタレントから政治家になって人気が出る不思議その1」

 先日、宮崎県の東国原知事が韓国に行かれた様子をテレビで放送していました。

その中で、韓国に観光で来ていた奥様方が、「ひがしさま〜」、「知事さま〜」と言って写真を撮る、あるいは、手を振るなどの映像が流れていました。

 親しみの中にも尊敬の念を持っていることが、このような行動に現れているように感じました。要するに、人気があるなあと改めて感じた次第です。


 お笑いタレントの時には、それほどではなかったのに、知事になって間もなくで、何故、これほど人気者になったのでしょうか。今回は、このことについて、Deep Thinkingしてみたいと思います。


 俳優やスポーツ選手から政治家になった方も多くいますが、人気の程度は、お笑いタレント出身の方が高いように感じます。その理由として、ひとつ考えられることは、ギャップの大きさです。すなわち、意外性ということです。


 思っていた(期待していた)よりやるじぁないか、と感じたことが魅力的に感じ、それが人気につながったのではないかということです。


 実は、異性のことを好きになる要素にひとつに“意外性”があるのです。「ちょっと見た印象は暗くて近づき難いのだけど、話してみたら結構面白いいの。」というような話をよく聞きますが、まさに、これが意外性に惹かれたということです。人は、無意識のうちに人に対して仮説を立てるようです。その仮説が外れた時に、脳が興奮するのです。


 ところで、新商品や新規事業の企画の際には、仮説を検証するという活動をよく行いますが、この場合は、仮説通りの結果が出た時に喜ぶ傾向があります。しかし、仮説が外れたということは、真のニーズに近づいたということでもあり、むしろ、意外な結果を喜んだ方がいい場合もあるかもしれません。


 「仮説は、検証するのものではなく、覆されるもの」という考え方も大切かもしれません。

第13回(2007.07.11) 「怪しげな健康セミナー」の共通点その2

 さて、前回は、「怪しげな健康セミナー」の共通点その1として、次のような話をしました。

・長寿国であることにはほとんど触れずに、健康の危機感をあおる話が多い
・消費者は、セミナーを通じて、高価な健康食品や商品を購入している
・しかし、高価な商品を購入する背景には、購入に至るプロセスに価値を感じ、このことに対してお金を払っているのではないか

 では、前回の確認はこの位にして、ここで、企業内で行なう新規事業開発に視点を移してみたいと思います。

 新規事業開発の企画段階においては、自分の企画を通すために、如何にその企画が良いものであるかを訴えることになります。そして、そのために、企画の良さを後押しするような情報のみを集め、考察することがよく行なわれています。どちらかと言えば、結論が決まっていて、後付の論理にて結論を補完するということです。

このように考えると、危機感という側面だけの話しをする「怪しげな健康セミナー」に似た所があるかもしれません。

怪しげな健康セミナーでは、結果的に商品を販売することが多い訳ですが、新規事業の場合は、事業プランという成果物を見て、プレゼンを聞いて、意思決定という結論を出していくことになります。

ところで、意思決定にあたっては、事業プランという成果物だけを判断材料にするのでしょうか。答えはノーです。すなわち、事業プランだけではなく、そこに至るプロセスも大きな判断材料にしていると思われます。

意思決定をする側は、怪しげな健康セミナーの参加者同様、プロセスにも価値があると思っているのでしょう。

本当に、「必ず成功する」と信じてプランニングをしているのか、「企画が通らないと仕事をしたことにならないから困るけど、通ったら通ったで、これも困る」というような気持ちでプランニングをしているのかなどを、プロセスを通じて見極めるというような要素もあるのではないでしょうか。

新規事業開発においては、結果の予測がつかないだけに、むしろ、プロセスが大切なのではないでしょうか。

第12回(2007.07.08) 「怪しげな健康セミナー」の共通点 その1

 日本人の平均寿命は、男女ともほぼ順調に伸びており、世界でも1位、2位を争う長寿国です。この背景には、カロリーの低い日本食、そして医療の進歩があるものと思われます。

 ところが、怪しげな健康セミナーを覗くと、ほとんどのセミナーで、健康に対する危機感を煽る話をしています。「○○ガンで死亡する人が増えています。その原因は食生活の変化にあり、免疫力が低下していることにあります。この○○飲料は飛躍的に免疫力を高めるものであり・・・」という感じです。健康食日本、長寿国日本、という話は、ほとんど出てきません。

 買う側も納得して買っているので、外野がとやかく言うことではないですし、また、納得して飲んでいるからこそ効果があるかもしれません(このように、感情面が効果に影響を与える所が、健康商品の面白く、また複雑な所です)。

 それにしても、1本数万円もする飲料や70万円もする布団を、何故買うのでしょうか。

 もちろん、身体にいいと思ってことはベースとしてあるのでしょうが、新しい知識を教えてくれた、楽しい数時間、あるいは数日を過ごさせてくれた、など、買うに至るプロセスに対してお金を払っている要素も大きいのではないかと推察しています。

 従って、「末期ガンが半年で治る」などのように、あまりに誇大広告にならない限りは、大きな問題にならないのではないでしょうか。

 ビジネスモデルを考える際、“プロセスを売る”という面も考慮に入れることは、大切かもしれません。